マンションの基礎知識。RC造・SRC造・壁の構造を知ると、介護リフォームの判断がしやすくなります
マンションの介護リフォームを考えるとき、意外と見落とされやすいのが「建物の構造」です。
手すりを付けたい、ドアを引き戸にしたい、段差をなくしたい。そうしたご要望は多いのですが、実際にはどのマンションでも同じように工事できるわけではありません。
その理由は、マンションごとに、建物を支えている仕組みや、壁・床のつくりが違うからです。
今回は、RC造とは何か、ラーメン構造と壁式構造の違い、床スラブの考え方、SRC造の特徴、そして介護リフォームで本当に大切な確認するポイントを、わかりやすく整理してご紹介します。
まずは基本。RC造とは何か
RC造とは、**Reinforced Concrete(鉄筋コンクリート造)**のことです。
鉄筋は引っ張る力に強く、コンクリートは圧縮に強いという特徴があります。この2つを組み合わせることで、互いの弱点を補いながら、高い強度を持つ構造をつくります。マンションで広く採用されているのは、耐震性・耐火性や遮音性に優れているためです。
ただし、リフォーム計画で本当に重要なのは、「RC造かどうか」だけではありません。
同じRC造でも、建物を何で支えているかによって、間取り変更のしやすさや、手すり・引き戸・段差解消といった工事の自由度が大きく変わります。

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ラーメン構造とは何か
RC造のマンションでよく出てくるのが、「ラーメン構造」という言葉です。
ラーメン構造の「ラーメン」は、食べ物ではなく、ドイツ語の**Rahmen(枠、額縁)**に由来します。柱と梁を強固に接合した“枠”で建物を支える構造のことです。
この構造の特徴は、建物を支える役割を柱と梁が担うため、住戸内の間仕切り壁が構造体でないことが多い点です。
そのため、間取り変更や開口部の拡張が比較的しやすく、将来のリフォームにも対応しやすい傾向があります。介護リフォームの視点で見ると、たとえば「2部屋を1部屋にして車椅子の回転スペースをつくる」「ドアを引き戸に変更する」といった計画がしやすい構造といえます。

壁式構造とは何か
一方で、RC造には壁式構造もあります。
壁式構造は、柱や梁ではなく、壁そのもので建物を支える構造です。室内に柱型や梁型が出にくく、空間がすっきり見える一方で、壁が構造体になっているため、撤去や開口変更に大きな制限がかかります。
この違いは、介護リフォームでは非常に重要です。
ラーメン構造なら比較的自由に計画できる工事でも、壁式構造では「その壁は触れない」「開口を広げられない」「引き戸化が難しい」といった制約が出ることがあります。つまり、見た目が似たマンションでも、構造が違えば工事の可否が変わるということです。

ラーメン構造と壁式構造で、何が変わるのか
この違いを、介護リフォームの実務に引き寄せて考えると、特に差が出るのは次の3点です。
間取り変更
ラーメン構造は、2部屋をつなげて動線を広げるなどの計画がしやすい傾向があります。
一方、壁式構造は耐力壁が絡むため、間取り変更はかなり慎重な判断が必要です。
開口部の拡張
開き戸を引き戸にしたい、車椅子で通りやすいようにドア幅を広げたい。
こうした工事は、ラーメン構造のほうが対応しやすい一方、壁式構造ではコンクリート壁が絡むと拡張が難しくなります。
手すり工事
壁の表面に取り付けるだけに見える手すりも、実際には壁の中の下地や構造条件に左右されます。
「壁だから付く」ではなく、「その壁に安全に効かせられるか」が大切です。
床スラブの基礎知識。直スラブと二重床
介護リフォームでは、壁だけでなく床の構造も重要です。
勉強会で取り上げたように、マンションの床は大きく「直スラブ」と「二重床」に分けて考えることができます。

直スラブ
コンクリートスラブの上に、直接カーペットや直貼りフローリングを施工する工法です。
この場合、床下の空間がほとんど取れないため、配管移動や床を下げてフラットにする工事が難しくなります。
二重床
コンクリートスラブの上に支持脚やボードを組み、その上に仕上げ床をつくる工法です。
床下に空間があるため、配管計画や段差調整の面で有利になることがあります。全面リノベーションや水回り移動を伴う工事では、二重床のほうが対応しやすいケースがあります。
介護リフォームでは、手すりだけでなく、将来的なバリアフリー化まで考えることがあります。
そのため、「このマンションは直床か二重床か」は、段差解消のしやすさを考える上で大切なポイントになります。
SRC造とは何か
次に、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)です。
SRC造は、柱や梁の中に鉄骨の芯があり、その周囲を鉄筋コンクリートで構成する構造です。RC造とS造の特性をあわせ持ち、高層建築や大スパンの建物に向いています。
一般的な説明では「SRC造はRC造より強い」「高層向き」といった話で終わりがちですが、介護リフォームの現場では、もっと実務的な違いとして現れます。
SRC造が介護リフォームに与える影響
1. 柱と梁が太い
とくに築古のSRC造では、柱型や梁型が大きく出ることがあります。
これにより、廊下や室内の有効幅が狭く見えたり、車椅子動線に影響したり、アウトセット引き戸や手すりの納まりに干渉するケースがあります。
2. コンクリート壁が非常に硬い
SRC造では、コンクリート面への施工が難しいことがあります。
仮に管理規約上許可があっても、アンカーを打とうとして内部の鉄骨や太い鉄筋に当たり、思うように施工できない場合があります。こうしたケースでは、コンクリート面に直接頼るのではなく、ベース材を設けるなど別の納まりを考える必要があります。
3. 床の考え方はRC造と同じ
SRC造だから床下スペースが広いわけではありません。
築年数によって、直床か二重床かを確認する必要がある点はRC造と同じです。
築年数によって見極め方も変わる
SRC造を年代別に見る視点も重要なポイントとして扱いました。
1970年代ごろの築古マンション
第一次マンションブーム期の高層マンションや大規模団地では、SRC造が多く見られます。
この時代の建物は、柱や梁が太く、室内への出っ張りが大きい傾向があります。さらに、間仕切りが木下地でつくられていても、経年劣化で壁が歪んでいることがあるため、手すり設置時には水平・垂直確認が重要になります。
2000年代以降のマンション
技術進歩により、現在の新築や築浅マンションでは、高強度コンクリートを使ったRC造が主流になっています。
SRC造はタワーマンションなど一部で使われるものの、一般的な住戸ではRC造が中心です。
手すり工事で本当に大切なのは「壁の中身」
今日の中でも、ブログ読者にぜひ伝えたいのがここです。
介護リフォームのご相談では「手すりを付けたい」というご要望が多いのですが、手すり工事で一番大切なのは、壁の中に何があるかです。
下地には、LGS、木下地、ALC、GLボンド、RC直など、さまざまなパターンがあります。
表面は同じクロス仕上げでも、中が違えば、付けられる方法も安全性も変わります。
つまり、手すりは「壁に付ける」のではなく、安全に効く下地に付けるものなのです。

①と②は下地にビスを直接効かせることができます。
③はALCパネルというもので、下の図のように振動ドリルで穴を開けてALCの中に固定するか穴を開けて貫通させて壁の裏側で開くようなアンカーをつけなければなりません。
④と⑤は取り付け不可能なので、コンクリートに穴を開けなければなりません。しかし、その場合はマンションの管理組合に確認して承認を受けなければなりません。

下地確認はどうやって行うのか
現場では、磁石やセンサーを使って下地の有無を確認していきます。
たとえば、磁石が縦に連続して反応するならLGSの可能性が高く、点々と不規則に反応するならビスや金物、コーナー材の可能性があります。逆に、ほとんど反応がない場合は、GL貼りや木下地、RC直なども考えられます。
もちろん、磁石やセンサーだけで100%判断するわけではありません。
ただ、こうした反応パターンを見ながら、どこにブラケットを効かせられるか、どこは補強が必要かを考えていくのが、介護リフォームの現地調査です。

こうして見ると、介護リフォームは単なる工事ではなく、建物の条件を読み解きながら、安全に暮らせる形をつくる工事だとわかります。
まとめ
マンションの構造を知ることは、建物の強さを知るだけではありません。
どこまで住まいを変えられるか、どんな介護リフォームが可能かを知ることでもあります。
RC造か、SRC造か。
ラーメン構造か、壁式構造か。
直床か、二重床か。
そして、壁の中にどんな下地があるのか。
こうした基礎知識があるだけで、手すり工事や将来のバリアフリー計画の見え方は大きく変わります。

